まわれアザラシ、棍棒よけて。

公演の宣伝用ブログ 兼 雑記

20歳⑮

TITLE:にほんごとかんこくごであそぼう  

DATE: 03/07/2011

BODY: ハンくんは韓国人、二重で色白でイケメンだ。
身長はボクと同じぐらい、でも体は、はるかにガッチリしている。
なんせ彼は、徴兵を経験しているのだ。

留学生としてウチの大学に来たハンくん、なんと軍隊の中で演劇の魅力に目覚めてしまったらしい。

そして今日、日本語のスピーチコンテストに出ることになったので、原稿や発音を見てくれるように頼まれた。
面白いと思ったので承諾。
留学生だけの国際寮の中で、二人して二時間ほど原稿と向き合う。
いや、もう発見の連続だった。

僕は日本語のネイティブスピーカーだ。ゆえに、日本語の原稿の間違いを正すなんて楽だ、なんて思っていた。
しかし、それは間違いだった。

ハンくんはかなり日本語ができる。だから、彼の原稿はすでに、ある程度、文法的には正しいものになっていた。
しかし、文法的に正しいことは、必ずしもいい文章とは限らない。

スピーチ大会には、彼のような交換留学生だけではなく、しばらく在住している外国人も参加する。

「コレで一位をとれますか?」
真剣そのものの顔で、彼は言う。

ボクが直すと、それはボクの表現になってしまう。ハンくんが、感じたことをハンくんが喋れるものにしなければならない。
彼自身が納得できるように、細かいニュアンスを伝えながら直していく。仮に知らない単語が出てきた場合(だいたい、すでに彼が使っている言葉の同音異義語。微妙にニュアンスが違う。)なぜその言葉が適当なのか、いちいち説明する。

そうすると、僕自身にも疑問が生じてくる。あれ、そういえばなんでだろう?
なぜここは、「が」じゃなくて、「は」の方がしっくりくるんだろう、とか。
「ボクもまた〜した」と「ボクも〜した。」はどう違うの?
「いい気分」と「気分がいい」 は微妙に違うような、つまりハンくん、これはね…。

ネイティブとしての、自信がガラガラ崩れていく。

あれ、ハンくんちょっと待って、ちょっと考えさせて。……これは、だから、つまり、その。

自分が言葉に対して、いかになんとなくでやってきたか。
ある意味、外国人は日本人よりずっと日本語に意識的だ。まぁ勉強してんだから。

「なんとなくニュアンスで分かりあえるんだからさ、ウチらは。難しいことは考えなくてもいいんだよ。」

ニュアンスで分かり合えない相手が来たとき、どうするか? 説明できる力はあるんだろうか。「コレはこういうもんなんだ」では説得力がない。



そして意外や意外、
彼の繰り返しが多く、話し言葉っぽい、原稿には味がある。

一位をとるためには、むしろ、いじってはいけないと思った。その拙さが表現になりうるんじゃないか。
審査員がどう思うかわからないが。その方向でいくことにした。

その後、エモーショナルな読み方の練習に入り、イントネーションも練習した。

うーん、スピーチってわりと出たとこ勝負だよね。オレだったら、絶対原稿通りには読まない。
頑張れハンくんっ!


〜〜〜〜

休憩がてら、ちょいちょい韓国について色々聞いた。
うーん有意義なひと時だった。

 

〜〜〜

前の記事と違って、よい文章だわ。

日記を読み返すときもそうだけど、

自分一人でうだうだ言ってるより、

基本、他人が出てくる記述が面白い。

 

そして、これを見るまで、おれはハンくんの存在を忘れていた。

このアーカイブ作業をしなかったら一生思い出さなかったのだろうか?

同じく桜美林の演劇部にいた、アイスランド人のスワーヴァのことはすごく良く覚えているのに。異性だからか。かもしんない。

スワーヴァは「ハンくんはめちゃくちゃ日本語がうまい」つってた。

……でもスワーヴァ英語めっちゃ出来るじゃん。(ハンくんを起点にずるずると記憶が再生されている)