20歳⑫
TITLE: 『ゼロからの脚本術』 CATEGORY: 読書 DATE: 02/15/2011 11:47:14 ----- BODY: 『ゼロからの脚本術』
なんども読み返す、魅力がある本。
映画のシナリオ作法を紹介した本は山ほどある。ハリウッドの三幕構成法(導入、展開、クライマックス)について書いてあるモノ。とりあえず、映画を山ほど観ろと、諭すモノ。しかし、このショッキングなピンク色の表紙の本は、そいつらとは、一線を画す。はっきり言って、ヤバイ。
オリジナル脚本に定評のある、映画監督、脚本家10人のインタビュー形式の本。目からうろこの、金言ゴロゴロ。
以下、10人の名前、代表作、インタビューのテーマ。
古沢良太 『ALWAYS 三丁目の夕日』
「世の中を変える脚本を」
内田けんじ 『運命じゃない人』 『アフタースクール』
「その構成は美しいか?」
三木聡 『インスタント沼』 『亀は意外と速く泳ぐ』
「おもちゃ箱をひっくり返して並べてみる」
園子温 『愛のむきだし』 『自殺サークル』
「いけないことを、やる。」
大宮エリー 『the波乗りレストラン』 『木下部長とボク』
「ドラマを観るより、人生をドラマに。」
筧昌也 『美女缶』 『恋するマドリ(原案)』
「“もしも”で“しかも”、が面白くする」
福田雄一 『大洗にも星は降るなり』
「リアリティって何ですか?」
横浜聡子 『ウルトラミラクルラブストーリー』 『ジャーマン+雨』
「頭、固くない?」
高橋泉 『ソラニン』 『ある朝スウプは』
「何のために書くのか。」
行定勲 『GO』 『世界の中心で愛を叫ぶ』
「オリジナルはどんな状況からでも生み出せる。」
アナタの好きな監督、脚本家はいますか?ボクはいます。
この本の、すっごく面白っ、かつ、いいところは、皆言ってることが、バラバラ、ということ。
例えば、
「映画の場合、書きながらストーリーを考えるなんて、ほぼ不可能なんです。(きっちり構成派)」 古沢けんじ
↑
↓
「プロットって、あらすじですよね?あんまり書かないんですよ、ストーリーに関するメモも、ほとんどとったことがない(笑)。僕はストーリーを決め込まず、ふわっとさせておいて、実際に書いてキャラクターを転がしながら、お話を作っていくタイプなんです。(ふわっと派)」 福田雄一
など。違いが面白くもあり、なるべく普遍な、共通点を見つけるのも面白い。
よし、ここはひとつ、僕のためにも、一人一人の言っていることをまとめて、ブログに連載しようか、
とも思ったけれど、どうも、面白くなりそうにない。だって、インタビュー形式がミソだもの。
しかし、ホントに、なるほどと思える、金言がゴロゴロしている。1ページにつき、1つ、2つ、3つ、ぐらいある。
「一日に一つ、アイデアをノートに書き溜める、半年後には、180個のアイデアが溜まり、自分が何に興味があるのか、どんな思考の傾向の持ち主なのか、見えてくる、一本の線が浮かぶ、その線にそって、アイデアを投入し、作品に仕上げる」 三木聡
「脚本の書き方って、勉強しようと思えば、本もけっこう出てるし、学校もある。でも、ダイエットと一緒。ダイエット商品って、世にたくさんある。だけど、ダイエットなんて誰にでもできる。食べるものを減らして、運動をすれば、物理的に痩せないわけがない。何でダイエット商品が売れるかというと“楽に”がそこに入ってるから。“楽に痩せる方法”をみんな探している。
脚本もそれと一緒。みんな色んな方法を使って、楽に書ける方法探すけれど、歯を食いしばって、ずっと考えていれば、脚本なんて、絶対に書ける。100回書き直すつもりでやれば、いつかできる。それなのに、みんなどこかで、楽にやる方法を探している。そんなものないのに。」
「僕がいちばん勉強になったのは、本を読んだり、大学で学んだことではなく、自主制作映画をとること。ビデオカメラと、友達とパソコンさえあれば、誰にだってできる、金がないなら、金がないことを、かせにアイデアで勝負。高橋泉監督の『ある朝スウプは』なんて、長編なのに、3万円で撮っている。やろうと思えばできるんです。」
「自主制作は、アイデア勝負。バンバン撮って、賞に応募すればいい。周りは、だいたいつまらない作品ばかりだから、絶対、入賞する(ホントかよっ)」 内田けんじ
ーーーーーふぅ、ちょっと一休み。一息つきましょう。
では続き、
「オリジナルを実現するためには、まず、人にあらすじやキーワードを喋ってみるのがいいと思います。それで反応がなければ、そのアイデアは面白くない。ただ、そこで捨てる必要はなくて、「悔しい!」と思って考え直して、賛同者が増えれば、面白いものになる可能性もあるわけです。」
「(自分の書いた台本を見せて)「面白い」という人は、あんまり参考にならないです。「面白くない」という人を一杯見つけてきて、自分で自分の粗探しをする。そうして、書いて、直して、そのあとに、「面白い」と言っていた人にまた見せると「前より面白くなってる」と言われることが多いですよ。「なんだオマエ、妥協してたのか!」と思うんだけど(笑い)「面白い」といっているやつをもっと「面白い!」と言わせるには、「つまんない」という人を探して、そいつらに傷くことを言われるのが、一番いいと思います。
だから、「つまんない」と言われたら「どこが?」と聞く。そして、その部分を直して、読ませる。そして、「前の話より面白くなってる」と言われたら、大成功じゃないですか? そうやって、1人1人を潰していく作業も、面白い脚本を書く作業としては重要だと思います。」
「あとはやっぱり、本当に面白いシナリオが書きたいんだったら、いろんな経験をした方がいいと思います。
例えば、普段なら近づかないような、危険な香りのする異性とつき合ってみて、修羅場をみて、刃物をつきつけられて、血を見たら、「これはいい台本ができるな」と思えばいい(笑い)。その方が絶対に何か、本物を掴んで帰って来れる。人生経験がシナリオのネタになるんです。
日本映画は、そこが弱いと思うんですよ。みんな人生経験がなくて、コンビニに行って帰ってくるだけの生活なので、やはり、コンビニに行くだけの映画しか書けない。一回、イラクとかで、戦争体験とかしてくれば、全然違うと思いますよ。日本映画がどんどん大人しくなっているのは、平和すぎるから。」 園子音
「自分が何に惹かれているのかーーそれが、まずわからないと、何も追及することができない、まずは、自分の無意識に、意識を傾けてみること」
「(自分の作品について)まわりからどう思われているかなんて、気にしていたら、つまんない。せっかくモノを作るからには、パンクでありたくないですか?」 横浜聡子
ほら、こんな断片より、ぜったい全部読んだ方がいい。インタビュー形式なので、読みやすい。この本のおかげで何度、目的の駅を逃がしたことか。
『ゼロからの脚本術』 誠文堂光社 1990円+税
〜〜〜
当時、自分的に邦画ブームだった。
今は逆に洋画しか見ないから、特異な時期だった。
これも原因がくっきりある。
アイルランドに半年間留学してたときに「Japanese Film Festival」なるものが、向こうの大学であって、そこで三木聡の『インスタント沼』と中島哲也の『下妻物語』を観た。日本語が恋しくて、英語の字幕が付いてるのが新鮮で、楽しんでみた。
また、学内に映像を見る部屋があって(またかよ!)そこでも日本映画を観まくった。英語字幕付きなので、勉強のためとも思っていたが、やっぱり恋しかったのだ。ノートパソコンを持っていなかったのでYOUTUBEとかもほとんど見なかったし。
アイルランドの公的な施設で、見られる日本映画だから、自ずと厳選されていて、
黒澤明とか溝口健二とかを初めとするビッグネームか、映画賞を受賞したやつとかばかりだった。
『リリィシュシュのすべて』も『たんぽぽ』も『AKIRA』も『誰も知らない』もアイルランドで初めて見た。中にはいまだ邦題のわからない日本映画なんかもある。
そこではまって、帰国してからも、桜美林の資料室とかTSUTAYAで、三木聡とか園子温とか犬童一心とかのべタな名作邦画をいっぱいみた。
とくに『人のセックスを笑うな』とか『ジョゼと虎と魚たち』とか『くるりのこと』とか共通の、あの雰囲気のあるものを好んで見ていた。
オダギリジョーとかの、あの芝居がリアリズムだと思っていた。
演劇のオーバーな演技は恥ずかしいと思っていた(今は思わない)
だから、なんかめっちゃ素直に絶賛してたのかも、この本を。
でも、この本が元で、横浜聡子とか、高橋泉とか知ったので良かった。
実力のある人が、実感の伴ったこと言ってる。
なんにせよ、いい本です。